COVID-19感染拡大前は社会交流を積極的に行っていたアクティブな高齢者も、地域の活動の場が途絶えたことで活動の機会が減少しています。
コミュニティの中で活動していた高齢者は、地域の人々とのつながりが薄くなってしまったことによる心身への影響が非常に大きいと考えます。
活動的な高齢者に、より大きな影響があった
生活全般への影響
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が中華人民共和国湖北省武漢市で2019年12月に発見されてから、2年が過ぎました。この感染症による公衆衛生上の対策で、不要不急の外出を自粛すること、買い物、外食、旅行などあらゆる場面において、私たちの生活に大きな混乱と影響を受けることとなったことは周知の事実です。
身体活動への影響
世界保健機関の調査では、CVID-19パンデミック宣言してから30日間で、世界187カ国5,404人の平均歩数が27.3%減少していると報告されており(1)、日本においても、65歳以上の高齢者1,600人に行った調査によると、1週間当たりの身体活動時間が約30%減少したと報告されています。(2)
高齢者はCOVID-19に感染すると重症化しやすいとされているため、多くの高齢者は不要不急の外出を控えており、自粛生活を余儀なくされていると想定します。外出自粛要請は身体活動自体を制限したわけではないものの、屋外への外出や散歩までもが前年同時期の頻度と比較して有意に減少していることも報告に上がっています。(3)
高齢者はこうした状況が続いた場合、身体不活動になりやすく、体力が低下し物忘れが頻繁に起こりやすくなることに加え、不眠などの出現も起こりやすいことが報告されています。(4) また、社会的・行動的な規制により身体活動が低下することで高齢者の抑うつ症状の発現につながる可能性が示唆されており、COVID-19感染拡大防止策によって社会的交流がしにくくなり、さまざまなストレスを抱えていることが明らかになりました。(5)
都市部在住高齢者・アクティブな高齢者に対する影響
特に人口密度の高い都市部では、COVID-19の感染者が地方部に比較して多く、また、都市部在住高齢者は、地方部在住高齢者と比較すると感染するリスクが高く、感染予防のための行動として自粛生活を行ってきたことにより、身体活動頻度が低下していたことが報告されています。
COVID-19感染拡大前は社会交流を積極的に行っていたアクティブな高齢者も、地域の活動の場が途絶えたことで活動の機会が減少しています。身体活動量の低下とともに、心身への影響が大きいこともこれまでの研究で示唆されています。(6) このようなコミュニティの中で活動していた高齢者は、地域の人々とのつながりが薄くなってしまったことによる心身への影響が大きいと考えます。(7)-(9)
【参考文献】
1. Tison GH, Avram R, Kuhar P, et al. Worldwide Effect of COVID-19 on Physical Activity: A Descriptive Study. Ann Intern Med, 2020.
2. Yamada M, Kimura Y, Ishiyama D, et al. Effect of the COVID-19 epidemic on physical activity in community-dwelling older adults in Japan: a cross-sectional online survey. J Nutr Health Aging, 2020.
3. 大西権亮, 廣瀬英生, 伊左次悟, 他. COVID-19 流行に関連した外出自粛で高齢者は活動頻度低下を感じているか?日本プライマリ・ケア連合学会誌, 2021.
4. 3年版高齢社会白書. 高齢者の自粛生活長期化による健康面への影響. 内閣府.
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2021/zenbun/pdf/1s3s_08.pdf (2021年12月1日) .
5. Noguchi T, Hayashi T, Kubo Y, et al. Association between Decreased Social Participation and Depressive Symptom Onset among Community-Dwelling Older Adults: A Longitudinal Study during the COVID-19 Pandemic. JNHA, 2021.
6. 斎藤民, 近藤克則, 村田千代栄, 他. 高齢者の外出行動と社会的・余暇的活動における性差と地域差, JAGESプロジェクトから. 日本公衛誌, 2015.
7. Cruwys T, Dingle G, Haslam C, et al. Social group memberships protect against future depression, alleviate depression symptoms and prevent depression relapse. Soc Sci Med; 2013(98): 179.
8. 矢庭さゆり, 矢嶋祐樹. 地域高齢者の社会参加の実態とその関連要因. 新見公立大学紀要, 2011; 32: 117-122.
9. 齋藤泰子, 川南公代. 高齢者の社会的孤立と健康に関する文献研究. 武蔵野大学看護学研究所紀要, 2017; 11: 21-29.